身近な方が亡くなり相続が発生すると、被相続人が生前に所有していた財産は、原則として相続人全員の共有状態になります。遺言書が遺されていない相続においては、この相続の対象となる財産の共有状態を解消し、各財産をそれぞれの相続人に帰属させるために、遺産分割協議を行う必要があります。
こちらでは、遺産分割の方法と、遺産分割協議の実施についてご説明いたします。
1.遺産分割の方法
遺産分割においては、預貯金などの財産はそのまま各相続人が協議で決定した取得分に合わせて財産を取得する「現物分割」が一般的です。
しかし、不動産などのそのままでは分割することのできない財産については、相続人間で受け取る財産の価値に不公平が生じてしまう可能性もあります。そのため、そのまま分けられない財産については、以下のような分割方法が可能です。
- 換価分割
不動産等の相続財産を売却し、現金化したうえで分割する方法 - 代償分割
現物分割の難しい財産を特定の相続人に帰属させ、その相続人から他の相続人に対し、代償金を支払う方法
遺産分割の方法としては、3つの方法が設けられていますが、それぞれにメリット・デメリットが存在します。遺産分割を進める際には、これらのポイントを事前にきちんと理解しておくようにしましょう。
2.遺産分割協議の実施と遺産分割協議書の作成
遺産分割協議の実施には相続人全員の参加が必須です。一人でも不参加の相続人がいる場合、その遺産分割協議は無効になってしまいます。
また、相続人の中に未成年者や認知症の方がいる場合、その相続人は単独で遺産分割協議に参加することができません。その場合には、任意後見人や特別代理人を選任する必要があります。
遺産分割協議を行い、遺産分割の内容が確定したらその内容を遺産分割協議書としてまとめましょう。遺産分割協議書には財産内容を明確にしたうえで、相続人全員の署名と実印での捺印が必要です。遺産分割協議書は今後の不動産登記や金融機関の解約を進めるうえで必要な書類となりますが、相続人全員の署名・捺印のない協議書は無効になってしまいますので、注意が必要です。
3.遺産分割がまとまらない場合の相続税申告
相続税の申告は相続が開始された日の翌日から10ヶ月以内に完了しなければなりません。この期限を過ぎてしまうと、本来納めるべき税金に加えて、加算税や延滞税も課されてしまいますので、期限内に申告・納税を行うことは不可欠です。
しかし、場合によっては、相続税の申告期限までに相続人間での遺産分割協議がまとまらない場合もあります。
こうした遺産分割が未了の状態であっても、相続税申告は必ず期限内に行うようにしましょう。相続税申告は、民法に規定された法定相続分に基づいて計算し、申告することが可能です。期限内に一旦申告したうえで、遺産分割協議の完了後、申告内容の修正を行いましょう。